なぜそうなるか
害虫駆除の業者が名乗る「登録」とは?——建築物衛生法の「登録建築物ねずみ昆虫等防除業」は、登録がなくても営業はでき、登録業者と表示できるのは登録を受けた営業所だけ、という制度でした
ねずみやゴキブリの駆除を業者に頼もうとして、案内のすみに「都道府県知事登録」の文字を見つけることがあります。
登録と書いてあると、それだけで信用してよさそうに見えます。けれど、何の登録で、登録のない業者とどこが違うのかは、案内には書かれていないことが多いはずです。
蜂の巣について市ごとの対応を並べた前の記事では、市役所の側を見ました。今回は、業者の側に付いている「登録」を見ていきます。
読んだのは、建築物における衛生的環境の確保に関する法律(建築物衛生法)と同法施行規則の条文、厚生労働省の「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」、東京都健康安全研究センターの2つの頁です。どれも2026年9月27日の時点で読みました。
どの業者に頼むのがよいか、駆除の料金はいくらか、といったことは扱いません。登録のある業者とない業者の腕前を比べる記事でもありません。
登録という言葉が、法律の上でどこまでのことを言っているのか。それを条文と解説の順に確かめていきます。
・防除業の登録は、建築物衛生法の第12条の2にある8つの事業区分の1つ
・登録は「受けることができる」という形で、営業所ごとに都道府県知事が行う
・厚生労働省は、登録を受けない事業者が業務を行うことを制限するものではない、と説明している
・登録を受けていない事業者は、登録業者やそれに似た表示をできない
・登録の有効期間は6年で、東京都は登録営業所の一覧を公開している
「都道府県知事登録」は、何の登録なの?
害虫駆除の業者が書いている登録は、どの法律のもの?
登録の定めは、第12条の2の第1項です。書き出しは次の文です。
次の各号に掲げる事業を営んでいる者は、当該各号に掲げる事業の区分に従い、その営業所ごとに、その所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けることができる。
各号は8つあり、清掃や空気環境の測定、飲料水の水質検査などと並んで、第7号が次の文です。
建築物におけるねずみその他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物として厚生労働省令で定める動物の防除を行う事業
「ねずみ等」は、ねずみだけではない
第7号の「厚生労働省令で定める動物」を施行規則で探すと、第23条は「第四条の四に規定する動物とする」という1文だけでした。そこで第4条の4を開くと、次の文があります。
令第二条第三号の厚生労働省令で定める動物は、ねずみ、昆虫その他の人の健康を損なう事態を生じさせるおそれのある動物(以下「ねずみ等」という。)とする。
ねずみと昆虫を挙げ、さらに「その他」と広げる書き方です。具体的な虫の名前は、この条文には並んでいません。
そもそも、どんな建物のための法律なの?
法律の目的は、第1条にあります。
この法律は、多数の者が使用し、又は利用する建築物の維持管理に関し環境衛生上必要な事項等を定めることにより、その建築物における衛生的な環境の確保を図り、もつて公衆衛生の向上及び増進に資することを目的とする。
事業の登録も、この「多数の者が使用し、又は利用する建築物」の維持管理の中に置かれた制度です。一戸建ての家の駆除とこの登録がどう関わるかは、読んだ条文と解説には書かれていませんでした。
登録がない業者は、駆除をしてはいけないの?
登録のない業者に頼むのは、違法なの?
条文の「受けることができる」という書き方どおり、登録は義務の形ではありません。厚生労働省の解説は、その点をはっきり書いています。
なお、事業登録制度は、登録を受けない事業者が建築物の維持管理に関する業務を行うことについては何ら制限を加えるものではありません。
登録があるかないかは、営業してよいかどうかの線ではない、ということになります。
違いが出るのは「表示」
では、登録を受けると何が変わるのか。厚生労働省の解説で扱いが分かれるのは、表示です。
一方、登録を受けていない事業者は、登録業者又はこれに類似する表示を行うことはできません。
登録を受けた側の表示の名前は、法の第12条の3が決めています。防除の事業については「登録建築物ねずみ昆虫等防除業」です。
営業所ごとの登録
登録の単位についての記述も、同じ解説の中にあります。
また、登録は営業所ごとに行われるものですので、登録を受けた営業所以外の営業所について「登録業者である」という表示を行うことはできません。
同じ会社でも、登録を受けた営業所と受けていない営業所がありうる、という書き方です。
登録を受けるには、何が要るの?
登録には、何か条件があるの?
基準の中身は施行規則の第29条にあり、照明器具や調査用のトラップ、噴霧機、防毒マスクなどの機械器具と、それらを保管する専用の保管庫が並んでいます。防除作業の監督者が講習を修了していることも、条件の1つです。
働く人の研修について、東京都健康安全研究センターの頁の記述はこうです。
事業登録に係る作業に従事するすべての者(パート、アルバイト含む)は、1年間に1日程度(7時間以上)の事業主または登録団体の行う研修を受けなければなりません。
登録は6年ごと
有効期間を定めるのは、第12条の2の第4項です。
登録の有効期間は、六年とする。
6年を過ぎても登録業者と表示するには、新たに登録を受ける必要がある、と厚生労働省の解説は続けています。
登録を受けているかは、どこで分かるの?
業者の書いている登録が本当か、確かめる方法はあるの?
一覧の頁の最初の文は、次のとおりです。
この建築物事業登録営業所一覧は、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」に規定する事業登録制度に基づいて東京都知事の登録を受けた営業所を検索するためのものです。
2026年9月27日に見たときは、防除業を含む各業種の一覧がCSVとPDFで置かれ、「R8.8」の日付が付いていました。東京都以外の道府県が同じような一覧を出しているかは、この記事では確かめていません。
| 書かれていたこと | 出どころ | |
|---|---|---|
| 登録の根拠 | 第12条の2第1項第7号 | 建築物衛生法 |
| 登録の形 | 受けることができる(営業所ごと) | 同上 |
| 登録がない業者の業務 | 制限しない | 厚生労働省の解説 |
| 登録業者の表示 | 登録を受けた営業所だけができる | 厚生労働省の解説 |
| 有効期間 | 6年 | 第12条の2第4項 |
| 一覧 | 東京都は業種ごとに公開 | 東京都健康安全研究センター |
よくある質問
登録のある業者のほうが、駆除の腕は確かですか
登録の基準は、設備・監督者の講習・従事者の研修などを定めています。それが実際の駆除の出来とどう結びつくかは、読んだ資料には書かれていませんでした。
家の駆除を頼むときも、この登録を見ればいいですか
法律の目的は「多数の者が使用し、又は利用する建築物」の衛生です。家の駆除でこの登録を見ることにどれだけの意味があるかは、資料からは読み取れませんでした。見るなら、登録の営業所と、実際に来る営業所が同じかを確かめることになります。
蜂の巣の駆除も、この登録の対象ですか
施行規則の「ねずみ等」は、ねずみと昆虫とその他の動物を挙げる書き方です。蜂の巣の駆除がこの登録の業務に入るかは、条文と解説に名指しでは書かれていません。
この整理が変わる条件
- 建築物衛生法や同法施行規則が改正された場合(本記事は2026年9月27日に読んだもの)
- 厚生労働省や都道府県が、登録制度の説明を改めた場合
・「登録建築物ねずみ昆虫等防除業」は、建築物衛生法の事業登録の1つ
・登録は任意の形で、登録がなくても業務は制限されない
・登録業者と表示できるのは、登録を受けた営業所だけ
・登録の有効期間は6年
・東京都は、登録営業所の一覧を業種ごとに公開している
出典
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律 第1条・第12条の2・第12条の3(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC1000000020
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則 第4条の4・第23条・第29条(e-Gov法令検索) https://laws.e-gov.go.jp/law/346M50000100002
- 厚生労働省「建築物における衛生的環境の確保に関する事業の登録について」 https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei11/03.html
- 東京都健康安全研究センター「建築物ねずみ昆虫等防除業」 https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/k_kenchiku/touroku/shinsei/nezumi/
- 東京都健康安全研究センター「建築物事業登録営業所の一覧」 https://www.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/k_kenchiku/list/
登録の有無は、営業所の所在地の都道府県の担当部署でも確かめられます。
当方が上の出典を引いて確かめた日: